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【サントリー】新ギフトサービス「酒ことば」の実は…な思惑

サントリー「ザ・プレミアム・モルツ シリーズ」「SUNTORY WORLD WHISKY 碧 Ao」、ほか

最近、「虚礼廃止」をよく耳にしますが、「虚礼」という言葉が果たして適切であるのかちょっぴり疑問です。これでは、虚礼廃止令に従ってやめたら、今までの行為がすべて虚礼(本心が伴わない形式だけの儀礼)だったということになってしまいます。

そうなると、今までの行為が虚礼でなかったことを証明するために虚礼を続けるといった謎の矛盾行為(笑)も出てきそうで。なんだかなぁ、と思ってしまったり。

 


 

サントリーが「酒ことば」という新しいギフトサービスをはじめています。文字どおり、花ことばのお酒版です。お酒に伝えたい気持ちを間接的に添えて贈ろうよ、という付加価値提案です。

出典:サントリー「酒ことば」Amazon特設サイト https://www.amazon.co.jp/stores/page/3FF95961-E82C-4AB5-99F3-E2225E592608

 

このサービスの具体的な仕組みとしては、「リスペクト」「腐れ縁」「好敵手」などといった16種類の「酒ことば」から贈りたい言葉を選び、その言葉に紐づいたオススメのお酒に「酒ことばカード」をつけて贈ることができるギフトサービスです。

なお、酒ことばカードは選んだ言葉のカード1枚が添えられるというものではなく、必ず全16枚セットで送られるとのこと。その中から、「○番のカードを見てね」とメッセージを付けて(Amazon標準のギフトカード&メッセージ機能を利用)、贈りたい酒ことばを指定する仕組みとなっています。

それって…見かたを変えれば「選べるテンプレメッセージ付きギフト」とも言えちゃうわけで、そういう身も蓋もない言いかたをしてしまうと一気に目新しさが半減してしまうのです。とにもかくにも、この「酒ことば」というコンセプトがどれだけ浸透するかにかかっていると思います。

出典:サントリー「酒ことば」Amazon特設サイト https://www.amazon.co.jp/stores/page/3FF95961-E82C-4AB5-99F3-E2225E592608

 

また、酒ことばは、1つの言葉に複数のお酒、1つのお酒に複数の言葉といった感じで、必ずしも「お酒:言葉=1:1」の構成ではないようです。このあたりは本家の「花ことば」よりも柔軟な設定であるようです。

「この言葉を贈りたいんだけど、あの人ウィスキー飲まないんだよなぁ…」みたいな機会損失が減らせて、柔軟といえば柔軟ですが、あまりそのあたりを何でもアリにしすぎると今度は言葉のありがたみが薄れてしまいそうだなぁ、というところはちょっぴり気になります。サジ加減が難しいところです。

出典:サントリー「酒ことば」Amazon特設サイト https://www.amazon.co.jp/stores/page/3FF95961-E82C-4AB5-99F3-E2225E592608

 

なお、今のところ(2023年7月現在は)このサービスはAmazonだけで展開されているようです。おそらく現時点ではまだテスト販売的な位置づけといったところでしょうか。

わたくし個人的には、この企画のチャレンジレベルは「高」だと思っています。レベル高とはすなわち、成功へのハードルは高めであるということです。サントリーも一気に全国展開させるにはちょっと成否が読みきれない部分があったのだろうと思います。

 

 

なぜ、チャレンジレベル「高」なのか

なぜこの「酒ことば」企画がチャレンジレベル高なのかというと、本家の「花ことば」と比較してみるとわかりやすい気がします。

あと、花ことばも酒ことばも、それを差し出す人と受け取る人がいる、という点に着目して「通貨」に例えて話を進めてみたいと思います。

それぞれに当てはめると、花ことばは「法定通貨」、酒ことばは「仮想通貨」といえます。どちらも“通貨”であるという物理的機能だけ見れば同じですが、そのバックグラウンドがぜんぜん違うのです。

法定通貨とは、国家によって価値が保証されている通貨ですよね。では、国家による保証があれば盤石なのかというとそうではなく、その国家や通貨が皆から信用されていてはじめて価値がつくのです。

逆にいうと、それらが誰からも信用されなくなってしまったら…その法定通貨は一気に無価値になります。

花ことばには、「古くから世界中で親しまれてきた思想である」とか「誰もが知ってる概念である」とか、誰もがそれを信用するに足る歴史的背景や認知度の高さがあります。それが法定通貨に対する信用と同じ働きをするわけです。

花ことばを添えて花を贈られて、「花ことば?何それ?」となる人はいませんよね。だいたいが「へぇ~花ことばなんてロマンチックねぇ~」といった反応になると思います。

それもこれも、花ことばというソフトコンテンツを、誰もが知ってて、誰もがステキと思える土壌がしっかりみんなの中に共通認識として存在するからこそ、そういうやり取りが成り立つのです。

一方で、酒ことばはどうでしょうか?今まで誰も見聞きしたことがない概念です。そりゃそうです、今回初めてサントリーが提唱した考えかたですから。

出典:サントリー「酒ことば」Youtube https://youtu.be/CRxVKdy1CDw

 

そんなポッと出の概念に“信用”がいきなりつくかというと…ほぼないと思います。よって、今のところは発行されたての仮想通貨的なポジションと同じであるといえるわけです。

また、社会的信用のあるサントリー社が提唱しているという点も、まったく効果がないとまでは言いませんが、残念ながらあまり影響はありません。会社ではなく、この酒ことばというコンテンツを信用するかどうかがポイントになりますので。「ただのメーカーの売り文句だろ」と断じられてしまったらなかなか厳しい戦いになります。

今、サントリーがおこなっているのは、そういうチャレンジなのです。新しいギフト概念を創り、全くの信用がないところから信用を築き上げようとしている、発行されたての仮想通貨的ムーブなのであります。

仮想通貨の代名詞ともいわれるBitcoinのように、皆からの信用を得られれば大成功、さらに浸透して誰もが知っているギフトスタイルになれば、晴れて“法定通貨”の仲間入りも見えてきます。つまり、花ことばと同じポジションになれるということです。そうなると強いですね。

ただし、仮想通貨の多くは、誰からも信用を得られず(≒売買されることなく)ひっそりと終わっていくものも多いです。というより、むしろそれがほとんどです。

だからこそ、この取り組みをチャレンジレベル高と評価しております。失敗する可能性も十分に想定されるが、ただしうまくいったときに得られるリターンも大きいはずです。だったら、「やってみなはれ」の精神でチャレンジしてみようということなのでしょう。

 

 

サービス始動タイミングに見るサントリーの狙い

ところで、このギフトサービスが始動したタイミングが気になっています。7月18日ころから本格的なアピールが始まっているのです(Amazonでの取り扱いは7月初旬からあったようですが静かに販売されていただけです)。このタイミングって...

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