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【YBC】ニューレトロならぬガチレトロ戦略の先にいる人たち

ヤマザキビスケット「エントリー」「レモンパック」「ノアール」ほか

だまし絵の有名なものに「娘と老婆(別称:妻と義母)」という作品がありますよね。誰もが1度は見たことがあるものだと思います。

これって心理学界では多義図形と言われ、複数の異なる見えかたがするもののうち脳はその1つだけの見えかただけを選んでしまいがちという心理作用が働くようです。

もしそれを人にあわせて“見せ分け”できるならば、まったく異なる層への同時アプローチを可能にする「マルチターゲティング戦略」なんてものも可能になるかもしれません。

 


 

ヤマザキビスケット(以下「YBC」)が、サンド系ビスケットやクラッカーのスタンドパック商品を擬人化させる企画をスタートさせています。

ご覧のとおり、各商品をイメージしたキャラクターがレトロチックなテイストで描かれています。

出展:ヤマザキビスケット_YBCスタンドパックシリーズ「今日の3時はどのサンド?」特設サイト

 

あーはいはい、最近よく見かけるニューレトロ(ネオレトロ)イラストねって思うのですが、その直後、ん?ととある違和感を覚えるのです。

なんか、ガチっぽくないですか。レトロ感が。ファッションとか、ヘアスタイルとか、顔の描きかたとかもそうなんですが、一番大きなポイントは色づかいですかね。

ニューレトロイラストの代名詞といわれる色づかい(=濃いめなパステル調のピンク、青、紫色など)が、今回のYBCのイラストレーションではまったく使われていないんですよね。※ニューレトロイラスト参考↓

出展:Google「ニューレトロイラスト」検索

 

一般的にニューレトロ(ネオレトロ)と呼ばれるイラストたちが、80-90年代のアニメやシティポップテイストを踏襲したものであるのに対し、今回のイラストはそれよりもうひと昔前の60-70年代を感じさせるテイストになっています。

なんというか、色づかいだけでなく、全体的に落ち着いた雰囲気からして、“ニュー”というワードとは少し距離感があります。

よくよく見ればタッチはモダナイズされているものの、60-70年代っぽい味わいがしっかりあるというか、なんだか「バァバたちの若いころの絵柄」っぽさがしっかり感じられるイラストです。

色づかいだけレトロっぽいけどほかは全くその要素ないよね…みたいな“エセ”ニューレトロをいたるところで見かけるなかで、ガチなレトロ路線で攻めてきていて、非常に好感の持てるイラストでございます。

 

 

まるでスルメのよう…それがYBCという企業

ところで、以前から「YBC」という企業のことは個人的にとても気になっていまして。

というのも、もともと「ヤマザキナビスコ」だった同社が、2016年にモンデリーズ社(旧ナビスコ)とのライセンス契約終了にともない社名変更されたわけですが、その時の新生ロゴを見たときの衝撃が今だに忘れられないのです。

これぜったい一般社員がパワポでつくったよね—— としかみえない垢ぬけなさに驚いたのを覚えています。あのオレオやリッツで一世を風靡したあのヤマザキナビスコの後継企業のロゴがこれか…と。

出展:ヤマザキビスケット公式サイト

 

当時は「さすがに3年もすれば見慣れるだろう」とタカをくくっていたのですが、7年経った今でもいまだこのロゴマークを見るたびに「あ、パワポ…」と感じさせる、あの強烈な垢ぬけなさと、そのロゴ案にGOを出した当時の経営陣に大変な興味があります。

この垢ぬけなさ、敢えてそうしているのか?…と読むと、なかなかのマーケティングスキルと、勝負師の勘を持ちあわせたスゴい企業なんじゃないかとも勘ぐってしまう次第です。

ちなみにロゴタイプのフォントほうも、独特の垢ぬけなさ(というより古めかしさ)を醸していて大変味わい深い仕上がりになっています。噛めば噛むほどに味わいが増すスルメのようなロゴタイプでございます。

出展:ヤマザキビスケット公式サイト

 

 

「バアバんちの戸棚にありそうなお菓子」というブランディング

YBCの成り立ちなどをまったく知らない人が、このロゴを初めて見たときにこの会社をどう思うか?—— かなり昔から存在していた歴史ある会社なんだろうなぁ…そう思いそうじゃないですか。

このロゴの古めかしさからして、まさか2016年に誕生したばかりの社名&ロゴだとは思わないと思います。もしかして、そんな老舗イメージを連想させるめにあえてこんな垢ぬけないロゴにしているのだとしたら、この会社に対する印象はずいぶん変わってきます。

今回の企画の対象となっているビスケット類のパッケージもいい感じに昭和っぽいです。なんだかバアバんちの戸棚にありそうなお菓子って感じがしっかり漂っています。

出展:ヤマザキビスケット製品一覧

 

これらエントリーやレモンパックは実際に歴史ある商品(エントリーは1971年、レモンパックは1972年発売)ですが、ここまでの間にデザインの更新は過去に幾度とおこなわれたはずです。が、いまだにこのバアバんちのお菓子っぽさをしっかり保っているところは、あえてそうしているものと見るべきだと思います。

 

 

60-70年代のお嬢さんこそ今のバアバたちです

同社のそういう戦略性を加味して見ると、今回の“ガチレトロ”感を打ち出してきているこの企画はなかなか納得感のある展開だと思います。

「バアバんちのビスケット」を地で行く商品ならば、バアバたちになじみ深いテイストのイラストで攻めてきても何も違和感はありません。むしろ当然であるともいえます。

レモンパックのユーザー年齢層データがあったので貼っておきます。主要顧客は70代女性らしいです。ビスケット・クッキー市場全体のユーザーのボリュームゾーンが40-50代にあるところから見ても、なかなかの“ご高齢お菓子”といえます。

出展:TrueData ウレコン「ビスケット・クッキーの売れ筋ランキング」

 

レモンパックやエントリーは、ちょうど彼女たちが10-20代のお嬢さんたちだった時代に発売されたクラッカー菓子です。そう考えると、冒頭のガチレトロなイラストが60-70年代のお嬢さんたちをイメージしたものである点とつながってきます。

バアバたちを狙う商品ならば、一般的なニューレトロっぽい表現ではなく、ガチレトロになるのも納得です。

 

 

バアバたち以外のターゲットもいる!?

ここまでのくだりを覆してしまうような話にも聞こえてしまうかもしれませんが、この施策ではほかにもターゲットとされている人たちがいます。

それは...

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