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【ネスレ/明色化粧品】ニューレトロはレベルの強~弱を使い分けるのです

ネスレ日本「ネスカフェ 香味焙煎 ひとときの贅沢」|明色化粧品「明色美顔水 火曜びコラボデザイン」

今の「ニューレトロ」といわれるスタイルは80-90年代のマンガやアニメ、シティポップイラストのテイストを踏襲したものです。この時代って、ひととおりやりたいことはやり尽くして、でもまだお金がたくさんあって、そんな人たちが欲望のままに余計なことに余計な情熱を注げた時代だったのだと思います。そんな“余計のカタマリ”の意味不明さが、今の若者たちにとって謎の魅力になっているのです。

 


 

ネスレのソリュブルコーヒー「ネスカフェ 香味焙煎 ひとときの贅沢」のブランドサイトが、女子たちを意識したものにリニューアルされました。こんな調子で、最近あちこちでよく見かけるようになったニューレトロ(またはネオレトロ)イラストレーションが活用されています。

公式発表では、新ターゲットは30代女性と定義されているようですが、このサイトの印象からして、もう少し下の世代も含めて狙っているような気もします。

出典:ネスレ「ネスカフェ 香味焙煎 ひとときの贅沢」特設サイト https://nestle.jp/brand/koumibaisen/

 

ただ、上記ではニューレトロとは言ったものの、よくよく意識してみると「これ、ニューレトロか?」ともなってしまうのです。色づかいがそれっぽいのでそう見えてしまいましたが、色を除いた描画だけで見ると、いうほどレトロ風味がないのがわかります。

なにより、昭和80-90年代っぽい、意味不明なよけいな描き込みがほとんどない。このあたりはどうしても現代っ子イラストレーターには難しい(予算的にも)ところなのだと思います。

ためしに色を抜いてみるとこんな感じです。ふつうに今どきなイラストになってしまいます。じつに無駄がない、合理的かつ洗練されたイラストレーションだと思います。

 

なお、ニューレトロというと、前述のような余計な描き込みの多さだけでなく、人物の服装や表情、髪形、ポーズ、持ち物などにもそれなりに昭和80-90年代っぽいものを取り入れるのが一般的な描きかたです。

が、今ではそんなニューレトロ表現にも、そのレトロレベルの強~弱の幅が出てきており、表現方法の多様性が育ちはじめているフェーズであります。

実際、今回のこのネスカフェのサイトのように、色づかいだけニューレトロな表現は「レトロレベル:弱」に該当するものだと思います。この「弱」レベルのものは最近プロモーション界隈ではよく見かけるようになった気がします。

ニューレトロに明確な定義はありませんから、これはこれでニューレトロですし、まぁそのあたりは言ったもん勝ちでもあり、そう感じさせたもん勝ちとも言えます。

 

 

ニューレトロとブランディングは、なかなか両立が難しいのです

ところで、なぜプロモーションまわりでは、ニューレトロのうち「レベル:弱」表現がよく見かけられるのかというと、理由はわりとシンプルだったりします。

ニューレトロはチープさが味だからです(イラストがチープだとは言っていません、そこからうけるノリの軽さをそう表現しています)。そのチープさは、一部の若者向けなカジュアル商品ブランドを除き、多くの商品のブランディングにはうまく馴染まない場面が多いのです。

出典:Google「ニューレトロ」検索結果 

 

「それが味なんだから、そこが気にくわなきゃ使わなきゃいいじゃない」というご意見もごもっともです。ごもっともですが、エモくてカワいいニューレトロは、女性たちを振り向かせる性能が非常に高く、企業からしたら魅力的なのです。

そこで、何とかしてニューレトロっぽさは取り入れたい、でもブランドイメージまで道連れでチープにはしたくない、というところの折衷案的な落としどころが、今回のネスカフェのような「レトロレベル:弱」スタイルなのだと思います。

ちなみに、今回のネスカフェ香味焙煎は、同社のソリュブルコーヒー製品群の中でもプレミアムラインに該当するものです。本来ならばどう考えてもニューレトロの雰囲気とは馴染まない、いや、馴染まないどころかまるでド反対のところに在るようなブランドです。

出典:ネスレ「ネスカフェ 香味焙煎 ひとときの贅沢」特設サイト https://nestle.jp/brand/koumibaisen/

 

が、そんなプレミアムブランドがニューレトロ表現をなんとかして取り入れる挑戦しているところから、このブランドにとって20-30代女性層の取り込みが急務であるということがわかります。

 

 

レベル強で攻める、超ロングセラー化粧水ブランド

そんな多くのブランドが「レトロレベル:弱」にとどまりがちななかで、「レトロレベル:強」で攻めてきている老舗化粧品ブランドが出てきております。明色化粧品の「美顔水」です。

ニューレトロイラストレーター「火曜び」氏とコラボしたデザインの「エモかわいい美顔水」を限定販売しています。

出典:明色化粧品「美顔水×火曜びコラボデザイン」特設サイト https://www.meishoku.co.jp/bigan/tuesday/

 

これ、エモいのか?という議論はいったん置いておくとして、レトロ感=昭和80年代の青春漫画風味の出しかたはめちゃくちゃうまいと思います。意味不明な余計な描き込み要素もしっかりあっていい感じです。

個人的にグッとくるのはキーコピー「ニキビといえば美顔水」の、余計な装飾だらけのフォント(謎の光沢表現とか、テキストを囲んだ輪っかなんて最高に意味不明でヤバいです)がまさに昭和80-90年代っぽいところですが、胸のハートに矢が刺さる描写なんかもニクいです。あ~あったわぁ~とオジさんオバさんたちはノスタルジっちゃうと思います。そういえばこの描写って最近たしかに見かけませんね。

今回のこの限定コラボ企画では、外箱だけでなく、中身のラベルにまでしっかりこのイラストが載せられていて、攻めの姿勢がしっかり感じられます。

 

 

ご長寿レトロブランドが全く違うレトロ風味を取り入れる理由

ところで、美顔水って明治18年から130年以上つづく超ロングセラー商品だそうです。もともとの通常商品もいい感じで130年の歴史を感じさせる明治レトロな見た目です。

そんな、明治レトロなブランドが昭和レトロを取り入れるって「結局レトロ→レトロじゃん」という話なのですが、そんなコトバで言い現わせることとは違って、見た目の雰囲気はまったく別次元のものになっています。

と、ここで1つの疑問が湧くのです...

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