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【ブラザー】ネガな横ヤリが入りそうな取り組みに大義名分を得る方法

ブラザー販売「家庭用プリンター/複合機各種」「プリントコンテンツスマホアプリ『SLOW』」

究極の環境保護ってなんなのか? それは「世界中のすべての企業が事業活動を停止させること」です。 しかしそれだけはどこも実践していませんし、それを責めるつもりもありません。 ただ、われわれは皆、そんな“ご都合主義”のなかで活動している事実をしっかり消化して、今日も一日お仕事頑張りましょう!

 

ブラザー販売が家庭用プリンターの販促施策として、幼児向け人気アニメ「パウ・パトロール」とのコラボキャンペーンを実施しています。ブラザーの家庭用プリンターと専用スマホアプリを使って、子育てに役立つコンテンツを印刷して楽しもう!というものです。

出典:ブラザー販売「スマホアプリ SLOW × パウ・パトロール コラボキャンペーン」 https://www.brother.co.jp/product/printer/contents/slow-pawpatrol/index

 

具体的なコンテンツ内容としては、遊ぶ(ぬりえや迷路など)、学ぶ(学習ポスターなど)、つくる(ペーパーフィギュアなど)、楽しむ(ガーランド作成など)という4つのテーマで、いろいろと楽しめるようです。

ちなみにそれらはブラザープリンターと専用スマホアプリを使って印刷できるようですが、その専用アプリについてはのちほど触れることとします。

 

 

「どうせ買うなら○○もできるほうがいいよね」判断を誘う

なお、これがそのキャンペーン訴求されている売場なのですが、家庭用とはいえビジネスユースメインのプリンター機種売場にはあまり似つかわしくない見た目のキャンペーンとなっています。

 

 

ただ、似つかわしくない=売れないということでもないです。買いを誘うシナリオがしっかりできていれば、どこでどんなアピールをしたって問題はないはずですし、そもそも売場のなかで浮いた存在であるということはある意味目立つということでもあると思いますので、モノは考えようというやつです。

今回のこの施策のシナリオとしては、プリンター選びで悩んでいる人たちに対し、「子どもとの楽しい時間も提供できますよ~」という付加価値アピールをキッカケにして自社商品を選んでもらおう——といったところでしょうか。

 

パウパトロールという幼児たちに人気のコンテンツとともに、「どうせ買うなら仕事だけじゃなくて、家族とも楽しめるほうがいいよね」という使いかたアイデアを親御さんたちにピンとこさせて、自社商品へ引き寄せるのです。

「プリンタは絶対このブランドじゃなきゃダメ」なんていう強いこだわりを持っている人は少数派ですから、お金を払って買うからには、できるだけ元が取れたほうがいいですよね。と、そんなちょっとした損得勘定をうまくくすぐる施策であると思います。

 

 

“プライスレス”な子育てコストに着目

ただ、プリンタ業界ってここが面白いところで、買ったらそれで出費は終わりというわけではなくって、使えば使うほどインク代(トナー代)という追加課金が発生するビジネスですから、「いろいろ使えそう」ということはすなわち「課金機会が増えそう」ということでもあると思うのですが、子育てコストってなかなか金額算定が難しいところですから、うまいところに着目した施策であると思います。

そもそも、ぬり絵しかり、お勉強ドリルしかり、工作集しかり、何をさせるにもそのアイテムの購入費(手づくりする場合は労力)がかかるわけですから、そこに着目するならばインク代のほうが安上がりだよね、という考えかたもできるわけです。

 

 

商売っ気を隠さない、アプリネーミング

なお、今回登場しているキッズ向けコンテンツのプリントアウトを実現させる専用スマホアプリとは、ブラザー販売が配布している「SLOW(刷ろう)」という自社アプリのことで、ちょうど1年前の2022年3月にリリースされたものです。

アプリのコンセプトは「育児に役立つプリントコンテンツアプリ」だそうで、今回のパウパトロールコラボコンテンツに限らずに、塗り絵や絵本、数字やひらがな勉強などなどの育児支援コンテンツがいろいろダウンロードできるものです。

出典:ブラザー販売「SLOW(刷ろう)」iOS版ダウンロードページ https://apps.apple.com/jp/app/id1609452979

 

「SLOW(刷ろう)」とカッコ書きでその意味までしっかり添えて紹介されています。「刷ろう」というド直球なメッセージ性がなかなかいい感じです。どんどん刷ってインク購入してね~というメーカー側の商売っ気がしっかり盛り込まれているどころか、それを隠す気もそれほどなさそうです。

ところで、このアプリのコンセプトとしてもう1つ、「生活をちょっと豊かに、印刷アプリ」というフレーズがちょいちょい出てくるのですが、紹介全体の文脈からして「子どもとの生活を~」という意味合いであるようなので、結局のところは育児支援アプリという立ち位置のものととらえておいて差し障りなさそうです。

SLOW WEBサイト
SLOW Youtube動画

 

 

どんどん刷ろうって…それ、ペーパーレ…

ところで、この「SLOW(刷ろう)」ってネーミング、よくよく考えてみるとなにげにチャレンジングじゃないですか。だって、時代的にはその逆に、刷るのを減らそう(ペーパーレス化させよう)という方向に向かっている中での話なのですから。

ひと昔前から存在していたアプリということならばまだわかるんですが、これ2022年リリースですから、もうすでにSDGsやらサステナブルやら環境配慮やら、あちこちで皆がヤンヤ囃し立てていた頃に出したアプリということになります。

いや、むしろ因果関係としては逆でしょうか。つまり、急速に進むペーパーレス化に危機感を感じたため、それを補うためのアプリリースであると見たほうが自然です。

ちょうどその頃は、コロナ禍による在宅ワーク増加で「印刷量→減」と「家族時間→増」が進んでいた頃なので、このアプリのコンセプトとすべてのピースが合致します。

 

ただ、世間がその主張をどうとらえるかは…いろいろと難しいところです。プリンターメーカーである以上、とにかく印刷をしてもらいたい、というアピールをしたってなにも問題はないと思うのですが、しばしば謎の正義マンたちが登場して、そんなまっとうな事業活動ですら許さなかったりもしますので。

そもそも、ぬり絵も、迷路も、学習ドリルも、今どきはアプリなどでできてしまったりもするので、「それ、刷る必要あるの?」などという思わぬ議論も出てきかねません。切り貼り工作だけは刷らなきゃできなそうなのでそれはいいとして。

 

 

“義旗”は1つではないのです

そんなリスク議論がブラザー販売社内でもあったんじゃないかと思います。そこで出てきたのが...

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