近ごろ、あらゆる商品で「全員必ずもらえる○○ポイント」キャンペーンがあるじゃないですか。あれの狙いってなんだと思いますか?購買促進、友だち獲得、顧客情報の獲得などなど。たしかにその通りです。では、抽選賞品と必ずもらえるポイントとがくっつけられているときはどうでしょうか?なぜくっつけているかわかりますか?
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P&Gがおもしろい取り組みのプロモーションをおこなっていました。イオン向けの限定キャンペーンで「オンラインであなたの木を育てよう」という内容の賞品を用意しているのです。※オリンピック選考会についてはいつものお馴染みの内容なので触れません。
植樹活動に意欲的なイオングループの企業方針にうまくあわせた流通限定キャンペーンに仕立てられています。
出典:P&G「環境に配慮した大会 パリ2024オリンピックを応援しよう!」キャンペーンサイト https://pg-rtp.spexperts.jp/aeon/
この「オンラインであなたの木を育てよう」コンテンツ(キャンペーン内ではBコース)について、ザックリとしたコンセプトはわかりましたが、その詳しい内容については主要な告知エリアではまったくと言っていいほど紹介されていません。画像の雰囲気で何となくこんなものだろうというのがわかる程度です。
というわけで、応募規約の中に小さく書かれた内容を見にいったところ、こんな仕様であるようです。そのまま抜粋です。
・衛星地図であなたの木が見に行けます。
・あなたの木に名前を付けられます。
・あなたの木や植えた農家の写真を確認できます。
・あなたの木のCO2吸収量が確認できます。
・詳細は、当選通知をご参照ください。
※当選賞品は同等機能商品に変更されることがあります。また、告知なく変更となる場合がございますので、予めご了承ください
う~ん、なんともただよう「とりあえず何とかなるっしょ感」や「走りながら考えようぜ感」がベンチャーのそれっぽくていい感じです。
この規約内容ならば大幅な内容変更だってどうとでもできてしまいますから、リスクも最小限なわけで。だとしたらザックリ構想だけ組んでしまってとりあえず走りはじめてしまおうというスタンスも納得です。キャンペーンはスタートさせてしまって、その間に考えればいいよね、という感じで。
ところで、この「オンラインであなたの木を育てよう」賞品の魅力はなんといっても、どうしようもない人たちのどうしようもない性質にうまく合わせていっている点だと思います。
自腹で寄付もせず、なんの労力も提供せず、手も汚さず、応援活動もせず、ただただP&G商品を買うだけで、あとは寝っ転がってスマホをポチーするだけで社会貢献した“名誉気分”が味わえる。すべて他人任せで、便乗するだけで、それなりの満足感が得られる—— というのがこのコンテンツの本質です。
このコンテンツに魅力を感じる「意識高そうに見せかけて実際は意識低い系な人たち」の本性をさらけ出すようなスキームになっていて、個人的にはこういうの嫌いじゃないです。
…と、ここまでは「意識高い風だけど低い人たち」について話してきました。
ただ、おそらく今回のこのキャンペーンのBコース(オンラインで木を育てようコース)の応募者たちのほとんどは、そんなタイプとは無縁な層が多数派ではないかと読んでいます。
というのも、このキャンペーンはAコースでもBコースでも、どちらのコースを選んでも「必ずもらえるLINEポイント250pt」が共通で付いてくるからです。これは抽選当選如何にかかわらず、応募すれば必ずもらえるというものです。
逆に、「AコースもBコースもどちらも要らないからとりあえずLINEポイントだけちょうだいな」という人たちのための選択肢はありません。必ずA/Bどちらかのコースを選ばなければならない形になっているのです。
そうなると何が起きるのかというと、そのタイプの人たちがこぞってBコースに流れる、という現象が起きるのです。
競泳の選考会なんて興味ないし、しかも開催地の福岡まで旅費等ぜんぶ自腹って…当たっても行かんわい!という人たちが、でもとりあえずLINEポイントは欲しいから、当たってもとくに害がなさそうなBコースを“消極的選択”するのです。
ところで、ちょっと考えてみていただきたいです。このキャンペーンに応募する人たちのなかで、最も多くの人のモチベーションになっていると思われるものは次のうちのどれでしょうか?
- オリンピックの“選考会”に行けるかも(抽選に当たれば)
- オンラインで自分の木が育てられるかも(抽選に当たれば)
- 応募すればLINEポイント250ptが必ずもらえる(2,500円分購入で)
…どうでしょうか。もちろん各賞品にそれぞれ刺さる人はいるとは思いますが、どこが多数派かで言えば、がぜん「3」だと思いませんか。購入額の10%相当額がポイントで戻ってくるということですから、そこそこな戻り率です。
となると、前述の“消極的選択”の流れに従うならば、結果的にBコースへの応募が多くなるのは必然です。
つまり、Bコースに応募した人たちの多くは、「オンラインで木を育てる」コンテンツの具体的な仕様 なんてどうでもいい にはあまり興味がないのです。そして、P&Gもそれはわかっているのだと思います。
だからこそ、ふわっとした構想だけでとりあえずキャンペーン開始しちゃっていいよね、内容は後で詰めればいいよね、というスタンスでも問題ないということになるのです。このコンテンツが大きく路線変更されようが、文句を言ってくる人はほぼいませんので。
そして、ここからがこの話のキモです。ではなぜP&Gは、LINEポイント進呈をわざわざほかの賞品とくっつけているのか?
Bプランに消極的選択票が集まってしまうことまで想定できているならば、最初からLINEポイントだけ別枠にするなり、そもそも別のキャンペーンとして分けてしまったっていいわけじゃないですか。
わざわざぜんぜん毛色の違う賞品たちとくっつける意味あるの?となるかと思いますが、実は意味アリアリなのです。
それは、このLINEポイント進呈が...