「永久機関」と呼ばれる人たちがいます。1つの商品を使いはじめると、半永久的にその商品を使いつづける人たちのことを指します。
彼らは「ロイヤルカスタマー」といわれる人たちとはまたちょっと違います。ロイヤリティ(忠誠心や愛着心)がそれほどなくてもそうしてくれるからです。
なぜか?理由はシンプルです。継続力はあるけれど、変えることは苦手なだけです。
明治のたんぱく質系栄養補助食品「TANPACT」が書店でサンプリングイベントをおこなっていたようです。楽にたんぱく質を摂るをテーマにした「ニッポン楽たん計画」なるイベントにちなんだ施策とのことです。
出展:https://x.com/simkit_sanseido/status/1701173739256180852|https://x.com/ebina_sanseido/status/1701173742766784753
出展:https://x.com/meiji_TANPACT/status/1701128440345493505
ちなみに同じタイミングで、スパ銭やシェアオフィスでも配布していたようなのですが、そちらはなんとなくわかるんです。ボディメンテ意識が高そうな人たちが集う場所ですから。
一方で、書店は…ま、そういう人も一定割合いるとは思いますが、なんだかちょっとスパ銭やシェアオフィスとは客層の毛色が違うと思うのです。
アプローチ相手に一貫性を持たせるならば、単純にスパ銭やシェアオフィス、あるいはそれに近い人種が集まる場所の配布先を増やせばいいんじゃないかとも思ってしまうわけです。
ところで、書店(実店舗)の利用頻度に関する調査結果なのですが、「半年に1回未満」という超低頻度層が4割強にもなるそうです。多くの人がほとんど本屋さんを使っていないということになります。
一方で、「月に1回以上~」の比較的高頻度な層が約3割程度(40代だけ4割弱)と、本屋の商売は一部の頻繁利用してくれるユーザー層に支えられていることがわかります。
出典:クロス・マーケティング「本屋に関する調査(2022年)」
今って、紙の本でもECサイトで試し読みができ、ポチればだいたい翌日には自宅に届きます。しかもほとんどの書籍が電子化もされていて、スマホアプリを使えば片手で場所も選ばずに読めてしまいます。
また、本屋の魅力としてしばしば言われるのが「素敵な本との出会いや発見」などもありますが、それも今やネットでちょっと調べれば注目の書籍情報もカンタンにわかりますし、ECサイトで買えば購入履歴や検索履歴を元にしたパーソナルレコメンドすら出してくれます。
そういわれてみれば、わたしも最後に本屋で本を買ったのはいつだっけな…?という感じです。わたしも確実に「半年に1回未満」に該当する人間です。個人的には電子書籍が多いですが、紙の本を買う時もあります。が、それもだいたいECサイトで購入しています。
なぜ本屋で買わないのか?と問われると、なぜでしょう…という感じです。むしろ「本屋で買わなければならない理由は何ですか?」と聞きたくなってしまいます。本屋で買いたくないのではなく、そこで買うべき動機がとくにないのです。
本屋の匂いが好きだとか、あの空間の居心地が好きだとか、そういったサブ的な要素に価値を見出している人もきっといると思います。それならばわかります。実店舗の本屋に行くことでしか得られない体験ですから。
でも、そういったサブ的な理由がとくになくして、ただ淡々と書籍を購入するために通いつづけているのだとしたら、そこには「惰性」という言葉がちらつきます。
惰性というと、どうも聞こえが悪い部分もあるので、もう少しポジティブな表現に言い換えると「同じ行動を変化させずに淡々と続けられる能力」ということができると思います。
その能力者たちは一度習慣化されると、それを生活の一部に定着させ、続けることを苦とせず、ほぼ無心でそれを持続させ、その費用対効果や合理性はあまり気にせず、一方で変化を好まず、浮気もせず、というよりそもそも浮気先を探そうともせず、ただただ、淡々と、淡々と、それを繰り返すのです。読書習慣も、そしてそれをわざわざ本屋で買いつづけることも、彼らにとってはたやすいことなのです。
これ、まさに明治TANPACTが、喉から手が出るほど欲しいターゲット層だと思いませんか。ブランドのキーメッセージでも「たんぱく習慣」とうたっているとおり、習慣的な利用をうながしたい商品群であるのは明らかですし。
TANPACT(に限らず多くの習慣系プロダクトもそうですが)が喉から手が出るほどほしいターゲット層である彼らですが、彼らを捕まえるのは至難の業です。なぜなら彼らは、積極的に新しいものを取り入れようという動きは鈍いからです。
新しい商品に、新しい商品だからという理由で飛びつくことはめったにしません。それ以外の動機や必要性があればもちろん検討はしますが。とにかく、なにかしらの強引めなキッカケを、企業側から至近距離で仕掛けるしかないのです。
そこで、白羽の矢が立ったのが、実店舗型の書店であり、そこでの現物手渡しサンプリングという最近ではかなり減ってしまったアナログなプロモーション手法であったのだと思います。
ECサイトではダメです、彼らはそこには来ません。クーポンやフライヤーではダメです、彼らは「ふ~ん」で終わります。
とにかく現物を渡す。そして一度食してもらう。そして気に入ってもらえるチャンスに賭けるしかないのです。ただし気に入ってさえもらえれば…“永久機関”が始動をはじめます。あとは黙ってても淡々と買いつづけてくれるウハウハモードに移行します。見込みがある人ならば1箱渡したっておつりがくるってやつです。
※以降、彼らに敬意を払いつつ、彼らを「永久機関ズ」と呼ばせていただきます。
今回のこの永久機関ズたちを狙った「書店サンプリング」手法において、守らなければならない重要なポイントたちがあります。この点をケアしなければ、ただのムダ打ちで終わってしまいかねません。
その重要なポイントとは...