ここのところステマ(ステルスマーケティング)規制強化が話題ですけれども。そもそもステルス性能ってマーケティングの基本だと思うのです。消費者を騙すとかウンヌンの前に、競合他社に狙いを悟られたり、容易にマネされたら困るわけですから。
そんな中でステルスとも言えないほどの誰にでもわかりやすい中途半端なものたちが総じてステマと言われている気がします。ほんとうにうまくステルスできているものはそもそも気付かれていないだけですから。何とも皮肉な話でございます。
サントリーがちょっと手の込んだティーザープロモーションを展開していました。プレミアムモルツの「#すずのビールは何ビール?」施策です。
出典:#すずのビールは何ビール?キャンペーン特設サイト https://suzubeer.com/
サントリーとは一切関連性を明かさない、謎の新規Twitterアカウント(@suzu_beer)をつくり、どこのメーカーの何ビールなのだか公表せずに、みなに「当ててみてね」と投稿をうながすのです。※7月3日スタート、7月10日正解発表という1週間限定のプロモーションです。
なお、この施策では当該アカウントのフォロー&ツイートした人の中から抽選で7名にすずちゃんの直筆サイン入りグラスが当たる投稿応募キャンペーンが目玉であるようです。
出典:すずのビールは何ビール?Twitterアカウント https://twitter.com/suzu_beer
その期間中、東京・大阪では1杯100円の“ききビール”イベントも開催されていました。リアルイベントのほうでも徹底した秘匿戦略がとられていたようで、イベントスタッフたちに銘柄を聞いても「知らされていない」と答える徹底ぶりだったようです(ま、そういう演出ですね)。
とはいえプレモルなので。だいたいみなさん当ててるようです。←ここ大事なポイントです。
出典:Twitterハッシュタグ「#すずのビール飲んでみた」検索結果 https://twitter.com/
ザッと見たところ、「わからない」も含めてハズしてる人は1割弱くらいでしょうか。なお、そのカウントの中には「香るエール」といった関連商品のハズしは含めていません。そのハズしはかなり多かったのですが、そこはまぁほぼ正解ってことでいいと思いますので。
つまり、ここで言っているハズしとは、まったく関係のないブランドのガチはずしってやつです。キリンやアサヒなどの他社ビールを答えちゃってる人たちがけっこういます。
ただ、この結果ってかなり優秀だと思うのです。過去には食品や飲料などで銘柄を当ててもらう調査もいろいろ見てきましたが、まぁハズれることハズれること。
これはさすがにわかるでしょう、みたいな商品でも正解率7割がいいとこだったりするので、そういった点を踏まえると、このプレモルの9割正解のスゴさを痛感するのです。
出典:Twitterハッシュタグ「#すずのビール飲んでみた」検索結果 https://twitter.com/
ところで、他社のビールでこれをやってたらどうだったと思いますか?個人的にはもっとハズす人多かったんじゃないかと思います。ここまでハッキリとした特徴を持たせたプレモルですらこの結果だったので。
そういえば、ガキ使(日テレバラエティ番組)でも「ききビール~!!」企画やってましたね。みなハズしまくってました。そういうことなんだと思います。
このプロモーションのうまいところはいろいろあるのですが、個人的に注目したいところは次の2点です。
まず1点目は、ブランディング視点です。プレモルの特徴といったらやっぱりあの「華やかな香り」(公式引用)ですが、それをどうやったら効果的に意識&再認識してもらえるのか?と考えたら、この手法の有効性がわかってきます。
前述のとおり、これだけ多くの人がなんなく当てているという事実は、プレモルがかなりエッジーな個性を持っていることの証左となるわけです。
「個性」をマーケ語に置き換えると「差別化ポイント」とも言えます。つまり、エッジーな個性=強力な差別化ポイントを持っている商品であるということになり、似たモノどうしがひしめきあう市場内での強力なプレゼンスアピールになるのです。
そんなブランドのプレゼンスをあらためて世間に知らしめることができただけでも、このプロモーションには十分に意義があったといえます。
そして2つ目です。こちらのほうはなかなかいい感じでイヤらしい戦略といえます(マーケ屋的にはめちゃくちゃウマいっすねって意味です)。
それは、SNSキャンペーン応募者=銘柄当て投稿者に「#PR」ハッシュタグをつけることを条件としている点です。#PRハッシュタグなんてありきたりじゃないかって?それのなにがうまいのかって?そう思うじゃないですか。でもうまいんですよ。
ちなみに前述のリアル試飲イベントでも同様にTwitterでの銘柄当て投稿をうながす訴求があったようなのですが、そちらでは#PRハッシュタグ付けは必須ではなかったようなんですよねぇ…ほぼ同じスキームなのになぜなんでしょう…。
と、ここでちょっと考えてみてもらいたいんですが...