若手スタッフが面白い話をしていました。年末年始の帰省予定についてオカンとLINEやりとりしているとき「ワンチャン行くかも」と言ったら「ワンチャンいるの?ちゃんと世話できてるの?」と返してきたそうです。この話の何が面白いの?と思ったあなた。あなたはオカン側の世代の人です。
まずは次の3つの衣服類の写真を見ていただき、あなたが普段、それぞれのアイテムをどのような呼びかたをしているか?イメージしてみてください。
「デニム」「スウェット」「ブルゾン」でしたか?
それとも「ジーパン」「トレーナー」「ジャンパー」でしたか?
前者は現在主流の呼びかたです。一方で、後者はひと昔前の呼びかたになります。このあたりは、おじさんおばさんたちの世代バレしがちな“あるあるネタ”としてちょいちょい話題になるやつですね。
これに関しては、親子間だとしばしばこういうやり取りが発生するわけです——。
ぼく「そこのブルゾンとって」
おかん「なにそれ?」
ぼく「そこにかかってる紺色のやつだよ」
おかん「あー、ジャンパーのこと?」
ぼく「ちげーよ、ブルゾンだよ!」
…といった感じです。
一方で、これが職場だったらどうでしょうか?例えば、ずいぶん歳の離れた位の高い上司とのやりとりなど。
部長「○○君、そこのジャンパー取ってくれる?」
わたくし「へい、こちらのジャンパーでごぜえやすね、喜んで」
…となるじゃないですか。
こういった世代間ギャップワードに関しては、TPOや相手との関係性にあわせて使い分けるのが一般的です。ことビジネスシーンでは、そのワードが古いか新しいかということよりも、スムーズに情報伝達されることが優先されることが多いです。
資生堂の「プリオール」ブランドが、昨年(2022年)に引きつづき「スタンプラリープログラム」を実施しています。1月21日~12月20日までの約1年間つづく内容で、基本的なスキームや期間などの設計はほぼそのまま昨年度のものが踏襲されています。それなりに効果があったということでしょうか。
出典:資生堂「プリオール スタンプラリープログラム2023」特設サイト https://www.shiseido.co.jp/pr/campaign/stamprally2023/
去年からの変更点をあえて指摘するならば、スタンプがもらえる金額条件がちょっぴりシブくなったところくらいでしょうか。そのあたりの微調整が容易にできるのは、プログラム自体を1年単位で区切って開催していることの利点だと思います。
ところで、この「スタンプラリープログラム」というネーミングを聞いて、どのようなスタンプの貯め方をイメージしましたか?
おそらく多くの方は、紙のスタンプラリーカードなどが配布されて、それに文字どおり物理的にスタンプを押してもらうような、昔ながらの“ザ・スタンプラリー”スタイルをイメージしたのではないでしょうか。
でも、実はそうではないのです。LINEでデジタル化されたスタンプ(という名のポイント)を貯める方式なのです。
このプリオールのスタンプラリープログラムの存在を初めて知ったという方にカンタンに説明させていただくと、基本的な施策のスキームとしては以下のようなものになっており、よくある「LINE連携ポイントプログラム」そのものと言えます。
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- プリオールLINEアカウントとお友だち登録
- トークルーム内の「スタンプをためる」にアクセス
- 購入レシート画像を撮影
- 応募フォームから送信
そこに紙のスタンプラリーカードなどは一切存在しません。ちなみに郵送で応募できるパターンも用意されているようですが、そちらでもただ応募に必要なポイント相当数分のレシートをそのまま郵送するするだけというもので、そちらでもスタンプカードなどは存在しません。
出典:資生堂「プリオール スタンプラリープログラム2023」特設サイト https://www.shiseido.co.jp/pr/campaign/stamprally2023/
ちょっと意外じゃないでしょうか。実態としてはただのよくあるデジタルポイントを貯めるプログラムであるわけですから、「ポイントプログラム」とストレートに表現すればいいじゃないですか。それがなぜか「スタンプラリー」というミスリードを招きかねないコトバが用いられているわけです。
そこには、このプリオールブランドのターゲット層である50-60代女性を意識した言葉選びがあるのです。この世代には「LINEでポイントをためよう」と言われるよりも「スタンプラリーをしよう」という昔ながらの表現のほうが、イメージしやすく、親しみやすく、そしてとっつきやすいのです。
「LINEでポイントを貯める・・・?わたしにはちょっとむずかしそうだわ・・・」なんて敬遠されてしまったら、せっかくの顧客囲い込み施策も意味がなくなってしまうので、そのとっつきやすさはここでは非常に重要なのです。
多少のミスリードを与えてしまってでも、「スタンプラリー」という彼女たちに受け入れられやすい表現を用いる必要があったということです。
と、ここまでの内容を踏まえたら「その世代にあわせた言葉を選べばいいのね、オーケーオーケー」となっちゃいそうなのですが、そういう単純な解釈で扱ってはいけないのがこの手法の難しいところであったりもします。
なぜいけないのかというと...