なぜ日本で「比較広告」をほとんど見かけないのかというと、他社の誹謗中傷色が強く日本人の国民性に合わないから——。な~んてのを大真面目に分析している人も見かけますが。そうじゃないですよね。
実際は、国内の大手広告代理店群がこぞって一業種多社制(海外では一業種一社制がふつう)をとっているからというのが主な理由です。比較広告でディスる相手もまた自社のクライアントであるわけですから、そりゃあできなくて当然ですよね。
日本人の国民性って、べつにそんないい子ちゃんではないと思っています。他者のディスリ合いも、苦手どころか大好物です。ネットを見てても、そんな“真の国民性”は明らかです。
でも、そんな本性もいいじゃないですか。だって、人間だもの。
P&Gの洗濯洗剤「アリエール」の、X(旧Twitter)公式アカウントがおもしろいプロモーションをおこなっていたので共有します。
「 #あなたの抗菌洗剤をアリエール除菌プラスと交換します 」ハッシュタグキャンペーンです。
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出展:X アリエール公式「#あなたの抗菌洗剤をアリエール除菌プラスと交換します」ツイート
世間の液体洗剤の多くが“抗菌”であるのに対し、同社のアリエール除菌プラスは“除菌”であることをもっと周知させることを目的とした施策であるようです。(※後日加筆:この直後9/23に花王からアタック除菌アドバンスが発売されましたので、それを意識した動きだったようです)
同ハッシュタグとともに、ご自宅にある“抗菌”系洗剤の写真につけて投稿すると、抽選で1,000名がアリエール除菌プラスと交換してもらえるとのこと。
実際の投稿は、こんな感じでなかなか盛り上がっています。予想どおりといえばそのとおりですが、花王のアタック系が圧倒的に多いですね。つづいて、アリエールの“抗菌”系アイテムと、ライオンのトップ系(主にスーパーNANOX)が同率くらいといったところでしょうか。
つまり、アリエールのバチバチのド競合ブランドたちが多数挙がっているということです。ウマいことP&Gの狙いどおりにコトが運んでいる印象でございます。
出展:X ハッシュタグ「#あなたの抗菌洗剤をアリエール除菌プラスと交換します」検索結果
言わずもがなですが、これは比較広告の一種になります。しかも、P&Gが欲しい「競合ブランドよりわが社の製品のほうが優れている」という結果を、消費者たちから自発的に発信してくれる流れをつくり出してもらう誘導型プロモーションとも言えます。
先ほど、アタック系とトップ系の写真が多く挙がっているという話をしましたが、実は市場シェア的には1位のアタックにつづいて、P&Gのアリエールが2位、同社ボールドが3位、花王ニュービーズ4位とつづき、トップは5位に挙がるようです。
参考:CCCMKホールディングス「【2022年】洗濯洗剤人気ランキングTOP30」
そんなシェアに従うならば、同社のアリエールやボールドなどの抗菌系アイテムがもっと出てきてもいいと思うのですが、それらはシェアに対して意外と少ない点にも注目したいところです。
そのあたりは「忖度と諦め」の心理が多少なり作用しているんじゃなかろうかと読んでいます。例えば、アタックもアリエールも両方持ってて使い分けている人がいるとしたら、どちらの画像を投稿に使うでしょうかね。
キャンペーン応募慣れしている人や、忖度が人並みにできる人ならば、P&Gの思惑をそれとなく推し量ってアタックの画像をあげるはずです。
あるいは、アリエールユーザーの場合は、今使っている商品が“抗菌”タイプのもの(つまり応募条件OK)であったとしても、「アリエールだと当たりづらそ…」と考えて応募を見送る人も少なからずいたはずです。
こういったウラの心理がP&G系製品が意外と少ない結果につながっているのではなかろうかと推察します。そして、それはP&Gにとって望ましい状況であるのはいうまでもありません。比較広告は、他社ブランドと比較してナンボですから。
そんな自社に都合のいい流れにも、うまく誘導できちゃっています。
ところで、ふとした疑問なのですが、これって当選したらほんとに「交換」されるんですかね。
なぜそんなこと思うかというと、当選品と引き換えに...