夜、閉店まぎわのスーパーで、お目当てのお惣菜弁当に5割引シールが貼られたらどう思いますか?「おっ、ラッキー!」となるのではないでしょうか。では逆に、朝、開店直後で同じ弁当にいきなり5割引シールが貼られていたらどう思いますか?「え…コレ大丈夫?」となりませんか?中身は同じなのに。なぜなのでしょうか…。
パナソニックが、IoT冷蔵庫の店頭展示品に一斉に「ものづくりのこだわり」訴求POPを貼り付けました。QRコードリンク先の特設サイトでは、設計~製造にかかわる従業員たちを登場させた、“顔の見える製品”アピールをしています。
▼リンク先WEBサイト
出典:パナソニック「パナソニックのものづくりへのこだわり」特設サイト https://panasonic.jp/reizo/quality.html
ちなみにこのステッカー、ほんの1-2ヶ月前までは存在しておらず、突然にこのステッカーPOPだけ追加で貼り付けられたようです。ご覧のとおり、まわりのステッカーPOPは以前から全て同じ状態で存在していたのに…なぜなのでしょうか。
▼参考:1-2ヶ月前の同じ売場
この売場の動きを見て、ちょっと気になる法則があるんです。それは、このステッカーが必ず「IoT延長保証サービス」ステッカーに隣接して貼り付けてあるところです。このステッカーが貼り付けてある商品はすべて必ず、例外なくです。これはさすがになにかニオいますねぇ。
この状況から推察するに、何かしらの事情で「延長保証サービスをフォローする必要が生じた」のではないかと読んでいます。
ちなみにこの「IoT延長保証サービス」ってなんなの?というところですが、IoT対応商品を購入し、専用アプリに連携させるだけで、通常1年間のメーカー保証が3年間に大幅延長されるというものだそうです。3倍ですよ、3倍。しかも無料で。
出典:パナソニック冷蔵庫「IoT延長保証サービス」特設サイト https://panasonic.jp/reizo/service/iot-ext-warranty.html
めちゃくちゃお得じゃないですか?いや、むしろお得すぎて逆に不安すらよぎりませんか?—— そう、ソレです。まさにそのネガな方向の連想が多発してしまって、ちょっとマズくないか?となったんじゃないかと読んでいます。
だって、考えてみてください。ただでさえIoT化により機械要素(=故障原因となりうる要素)が増えたところに、メーカー保証を通常の3倍にまで無料で延長します!なんて謳われたら、真っ先に思い抱いてしまうのは「つまり壊れやすいってことなのでは…?」ということだったとしても致しかたなしです。もちろん全員がそうであるという話ではありませんが。
むろん、パナソニックとしての本当の狙いはそこではないのですが(その点は後述します)、普通そこそこな金額を払って加入する長期保証が無料で付いてくるとなると、「うまい話にはウラがある」というコトバが頭をよぎるのは、まともな思考回路を持っている人間ならば当然です。これは買回り品(熟考して購入する品)の代表格である白物家電にとってはイタすぎる流れと言わざるをえません。
ところで話を少しだけ脱線させますが、「うまい話にはウラがある」の「ウラ」の定義ってわかりますか?このフレーズで使われているウラとは、「自分の理解が及ばないもの」を指します。
つまり、ウラがあったとしてもそれが理解のできるウラならば、ここでいうウラには該当しないということになります。冒頭エピソードの「夜の5割引弁当」がまさにそれです。その割引のウラの理由はカンタンに理解できるので、誰もそれを「ウラ」とは言わないのです。
一方で、「朝の5割引弁当」は意味が分かりません。だから警戒してしまうのです。今回のパナソニックのIoT延長保証サービスは、まさにその「朝の5割引弁当」になってしまった—— ということなんじゃなかろうかと思います。
そんな「朝の5割引弁当」に見られたままではマズい、はやく軌道修正せねば!ということで急遽つくられたのが、冒頭の「ものづくりのこだわり」関連の特設サイトや、その店頭ステッカーなのです。これらは、「延長保証=品質への自信の現れ」という連想シナリオにつなげられますので。
また、この件に関してはPR戦略も同時に動かされていて、4月11日の記者説明会で「長く使う家電」をテーマとした商品とサービス展開に向けた今後の方針説明がなされたとのことです。
出典:Impress Watch『パナソニック、「長く使う家電」へ転換。』 https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1492709.html
長く使う家電…家電はそもそも長く使うものなんじゃ…なんて、しょうもない揚げ足取りはひとまず置いといて、とにかくパナソニックとしては、この延長保証サービスを「長く使いつづけてもらえることを知ってもらうための施策」という風に見せていきたいのだということが分かります。
ところで、この施策におけるパナソニックの真の狙いってなんだと思いますか?
まさか、パナソニックが言っていることをホントにそのまま鵜呑みにして「素晴らしい方針だなぁ」なんて感心しちゃってるマーケ屋さんなどいないと思いますが。
大小さまざまな狙いが混在しているとは思うのですが、その中で最もコアな狙いどころは...