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【森永製菓】キャラコラボをとおした愛されブランドのつくりかた

森永製菓「マリー」「ムーンライト」「チョイス」ほかビスケットシリーズ

大好きな食べ物を毎日食べつづけていたら、ある日突然に「あれ、なんかぜんぜん食べたくない…」となることありませんか。大好物でもそうなるのに、ましてやそこそこ程度に好きなものを「大好きになってくださいねぇ~」と毎日食べさせられたらどうなりますか。大好きになるどころか逆効果じゃないですか。そんな話です。

 

毎年恒例の2月28日「ビスケットの日」にあわせた森永ビスケット群のキャラクターコラボパッケージ企画が今年も展開されています(商品自体は1/26から販売開始)。

今年はサンリオ100周年を記念してサンリオ100キャラが登場する、例年よりもちょっと豪華なコラボ企画になっているようです。

出典:森永製菓「サンリオキャラクターズ x 森永ビスケット」特設サイト https://www.morinaga.co.jp/biscuit/sanrio100campaign/

 

100キャラもいるの!?という時点で驚きなんですが、じつは2023年現在サンリオには450以上のキャラが存在するらしいです。ヘタしたらサンリオ社員でも「そんなキャラいたんだ…」ってのがたくさんいそうですね。

 

 

微妙なパッケージデザイン分けの3つの狙いどころ

なお、今回の企画の目玉は「パッケージAR」と「2パターンずつのコラボデザイン」の2点であるようです。

「パッケージAR」のほうは、文字どおりパッケージをARカメラで読み込むとサンリオキャラクターたちが登場し、音楽を演奏してくれるという内容になっています。

そのARを実際に見てみましたが、大人からすると、うんまぁ…そんなもんだよね。という印象ですが、子どもたちなら楽しんでくれるのではなかろうかと思います。

 

一方で、「2パターンずつのコラボデザイン」のほうは、7種類のビスケットのパッケージにそれぞれ2パターンずつのデザインが用意されているようなのです(つまり全14デザイン)。個人的にはこっちのほうが気になっています。

…というのも、ぱっと見ではほとんど見分けがつかないんです。

もちろん、2パターン展開があることをあらかじめ知っていて意識的にチェックすれば当然わかるのですが、売場に並べられているものをたまたま見かけた程度では、たぶんほとんどの人が気づかないレベルの違いでしかないのです。※会員ログイン後に売場写真もご覧いただけます。

 

せっかくのキャラクターコラボなんだから、もっとわかりやすくデザイン区別化すればいいのに…と思うじゃないですか。だって、そのほうがサンリオファンたちのコレクション買い(もっと熱心ならコンプ買い)だって誘いやすく、より売上UPに貢献してくれるんですから。

でも今回の場合は、“敢えて”そうしていないんだと思うんです。その理由は以下の3つです。

    1. パッケージを覚えてもらいたいから
    2. 商品を愛してもらいたいから
    3. ○○○○に接してもらいたいから

 

 

通常パケデザから逸脱しすぎると、次見つけられなくなる

1つ目の「パッケージを覚えてもらうこと」。これが最も重要なポイントであると見て差し障りないと思います。

毎年1回開催される、このビスケットの日コラボ企画の一番の狙いは「新規顧客の獲得」であるためです。そのためには美味しさを知ってもらうことと同時に、パッケージの見た目を記憶してもらうことは極めて重要なミッションであるはずです。

 

というのも、これらビスケット類は普段はなかなか陽の目が当たりづらいジャンルであります。例えばお店での扱いを見ても、定期的に目立つ売場(いわゆるエンド棚や大陳など)に展開されやすいチョコ菓子やスナック菓子などと違い、なかなかそういった場所にお目見えする機会が少ないジャンルであったりします。

となると、いくらコラボだからといって、あまり通常のパッケージの見た目から逸脱したデザインにしてしまうと、あとあとそれを買おうと思っても通常の棚のなかで見つけられなくなってしまうという問題が起きてしまうのです。

 

よって、通常の棚でそれを見かけてすぐにそれであると認識してもらえるように、消費者の記憶内にできるだけ正確に(通常デザインイメージを)インプットさせておく必要があります。

瞬間風速的に売上を伸ばしたいならば、間違いなくサンリオキャラクターをゴリゴリに打ち出したデザインにしたほうがいいと思います。が、あえて2パターンの違いが判らないくらいに控えめに展開しなくてはならないのには、そういったマーケティング的事情が存在するのです。

 

 

目先の利益か?将来への投資か?

2つめの「愛してもらうこと」について。これは、森永がこの施策をとおして最終的に育てたいのは当然ながら自社商品(今回の場合は森永ビスケット)のファンであり、サンリオのファンではありません、という話です。

それって当たり前なのですが、この手の企画の現場でしばしば見落とされてしまいがちな点でもあったりします。

こういったキャラクターコラボをおこなう際に、それをおこなうメーカー側としてはザックリ2つの戦略のバランス取りが求められます。1つは瞬間風速的な売上の獲得。もう1つは、商品を愛してくれるファンの獲得です。

 

前者の瞬間風速的な売上げづくりは、どちらかというとカンタンなほうです。今回のように多くのファンを抱えるコンテンツとコラボし、それを前面に打ち出せば、コンテンツのファンたちが買い漁ってくれるからです。

一方、そういった人たちは、そのコラボが終了したら商品の購入もやめてしまいがちです。彼・彼女らにとっては、「推しキャラアイテム」を購入することが目的であるわけですから。

もちろん、それをキッカケとしてその人たちが商品のファンになってくれればいいじゃないか、という話もあろうかとは思いますが、瞬間風速を重視した設計にすると、その可能性も自ら狭めてしまうことになります。

例えば、キャラコラボにあわせた「絵柄がつながるパッケージ」などは、瞬間風速型の際たるものだと思います。キャラファンたちはコンプ買いをしなくては気が済まなくなるからです。すなわち、爆買い(まとめ買い)が起きるということです。

 

企業側としては売上があがって嬉しいはずですが、商品(今回の場合はビスケット類)のファンを育てるという面において、それはしばしばネガティブに働きがちです。

コレクションのために買い溜めした商品の中身を、とりあえず溜まってるからという理由で一時に集中して食べつづけると、そのうち「もう食べ飽きたわ…」という負の記憶や感情と結び付けられてしまう懸念があるためです。愛されるどころか距離を置かれてしまうようにもなりかねないのです。

ほどほどの量を、美味しく味わって食べてもらうのが、長期的なファンを育てる観点においてはベターである。ということです。

 

 

爆買いさせないことによる、もう1つのメリット

そして、その“ほどほどの量を~”がもたらすもう1つのメリットが、3つめのポイントである...

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