自分の生活を守るより、地球環境を守りたい――。なんてキレイごとをのたまう人は、だいたい生活力に余裕がある人だと思います。
コカ・コーラ社が「家計と地球にやさしいキャンペーン」をイオン系店舗限定で実施していました。このキャンペーンネーミングは、人間の本性をうまく理解して付けられていると私のなかで話題です。
気候変動対策だ、海洋プラスチック対策だ、クリーンエネルギーだなどと環境配慮系の話が語られて久しいですが、こと途上国や後進国では、貧困問題や飢餓問題などの社会問題と比べてその関心度が低い実態があるようです。でも、それって仕方がないことだと思うのです。人間ってそういう生き物ですから。
人間の本質は、「自分の生命の安全と生活の質が保たれたうえで、はじめて他者にも優しくできる」生き物です。この点はマズローの欲求理論でもケンリックの欲求理論でもおおむね同じです。
そして、このキャンペーンの賞品ラインナップもじつに“環境二の次”感がバッチリで、家計重視で、人間じみていてとてもいいと思います。人間の“自分本位み”がプンプン漂っていていい感じです。
内閣府の調査によると、いま日本では7世帯に1世帯が“隠れ貧困層”であると言われています。日本における標準的生活水準と相対的に比較し、一定レベルをこえた低い水準で生活している人たちを指しているようです。今日食べるものに困っているというほどではないけれど、慢性的に食費を抑えながらでないと生活が成り立たない状況にある世帯です。
そういった人たちは「環境配慮」と言われてもいまいちピンときません。そんなことよりも自分たちの来週・来月の食費のほうが心配ですから。
コカ・コーラはそのあたりの実態をしっかりとわきまえてこのキャンペーンを作っているのだと思います。「環境だけでなく生活も向上させるアピールをしなきゃダメだ」と。
最近、「SDGs」や「サステナビリティ」、「環境配慮」などの後から盛り上がってきた“流行りワード”たちに追いやられた感がありますが、「エコ(eco)」という言葉は非常によくできた言葉だと思います。
なぜならエコ(eco)には、「Ecology(環境にやさしい)」だけでなく「Economy(家計にやさしい)」という意味も含まれているからです。先に挙げた人間の本質をしっかり踏まえた意味合いになっています。
そういう意味では、今回のコカ・コーラのキャンペーンもまさに"エコ”なキャンペーンだと思うのですが、どうもなぜか、「古臭いワードは使いたくない」的な意識が蔓延ってしまっていると思うんですよね。それはコカ・コーラに限らず社会全体的な話です。ほかの企業もしかり、受け手側の消費者もしかり。
いいじゃないですか「エコ」で。言葉の古さなんてどうでもいいと思います。大事なのはその言葉が指すことを実現させることなんですから。「ナウい言葉じゃなきゃキブンがのらないぜベイビー」みたいな今の社会的ムードがむしろダサイです。
「エコ回帰」。ぜひ進んでほしいものです。「環境配慮」なんてコトバよりもよっぽど人間的です。